「光の館」は、アーティストのジェームズ・タレルが、谷崎潤一郎の随筆『陰影礼賛』から着想を得て制作した作品で、大地の芸術祭 越後妻有アート・トリエンナーレ2000において発表されました。
この作品の最大の特徴は、建物そのものがアート作品であり、なおかつ宿泊できるという点。
正確に言うと「泊まらなければ体験できないアート」であり、鑑賞というよりも“滞在することで完成する作品”です。
和室の屋根はスライド式になっており、夜になると天井が開き、刻一刻と変化する空の光を室内から眺めることができます。
日没後、淡い青から群青、やがて漆黒へと移ろう空の色は、私たちが日常ではほとんど意識していない「光の変化」を、静かに、そして強く実感させてくれます。
四角く切り取られた空は、まるで一枚の抽象画のよう。
人工的な照明はほとんど使われず、自然光そのものが主役となる空間構成は、タレル作品ならではの感覚体験だと感じました。
また、館内のお風呂も印象的です。
浴室や床の間、寝室など随所に光ファイバーが仕込まれており、風呂に浸かると、やわらかな光に全身が包まれるような幻想的なバスタイムを体験できます。
直島の家プロジェクトや地中美術館など、これまでにもジェームズ・タレルの作品を鑑賞してきましたが、「光によって感覚が揺さぶられる」という体験はここでも健在。
ただし、この作品は宿泊が前提という点が最大の特徴であり、正直なところ、そのハードルの高さも含めて“作品の一部”なのだと感じました。




