霊場松島を感じる雄島~静けさの中に残る“祈りの島”

「日本三景」のひとつとして知られる松島は、現在では景勝地としてのイメージが強い場所ですが、中世においては“奥州の高野”と称される、死者供養の霊場でもありました。
その霊場としての松島の面影を色濃く残しているのが、雄島(おしま)です。

島内を歩くと、至るところに石碑や供養塔が点在し、岩肌に掘られた岩窟群の中には、仏像や五輪塔などが今も静かに安置されています。観光地として賑わう松島の中心部とは対照的に、雄島には張り詰めたような静寂が流れており、ここがかつて修行と祈りの場であったことを実感させられます。

江戸時代には、俳人・松尾芭蕉が『おくの細道』の旅の途中で弟子の曽良とともに雄島を訪れており、島内には芭蕉と曽良の句碑が建立されています。芭蕉もまた、この地の持つ宗教的な空気と精神性に深く心を動かされた一人だったのでしょう。

雄島へは、JR仙石線「松島海岸駅」から徒歩約6分。遊覧船乗り場のある中心街とは反対方向に位置しているため、訪れる人は比較的少なく、落ち着いて散策することができます。島自体はそれほど大きくなく、ゆっくり巡っても30分ほどで一周可能です。

かつて雄島には、頼賢(らいけん)という僧が22年間住み続け、一度も島を離れることなく法華経を唱え続けたと伝えられています。彼の徳行を後世に伝えるため弟子によって建立された「頼賢の碑」は、現在国の重要文化財に指定されています。

また島内には、当時掘られたとされる岩窟が約50箇所残されており、仏像や供養塔が点在しています。雄島は単なる観光スポットではなく、信仰・修行・供養という松島のもうひとつの歴史を今に伝える貴重な場所だといえるでしょう。

宮城県宮城郡松島町松島浪打浜24

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会社をボイコットして小さな車でひとり、日本一周の旅をしました。 温泉が大好きで秘湯や混浴、鄙び宿を中心にひとり温泉旅行に出かけています。海外よりも国内旅行が好きですが、韓国やベトナムには毎年数回行っています。(韓国がグルメと美容目的、ベトナムは普通に好きなだけ)基本的に一人旅をしますが、たまに愛犬の福ちゃんや連れとも出かけます。2025年冬に古民家を購入して自力でDIYで古民家改修。神戸と田舎の2拠点移住、畑仕事や地域行事に勤しみます。