瑠璃光院（るりこういん）は、京都市左京区上高野、比叡山の麓に佇む浄土真宗の寺院です。
岐阜市に本坊を置く「浄土真宗 無量寿山 光明寺」の支院で、本尊は阿弥陀如来をお祀りしています。

もともとは別荘として造営された建物で、約1万2,000坪という広大な敷地に、数寄屋造りの書院と日本庭園を有しています。
現在は通常非公開ですが、春の青もみじと秋の紅葉の時期にのみ特別公開され、その限られた公開期間ゆえに高い人気を誇ります。

とりわけ有名なのが、書院2階に置かれた机の天板に、庭のカエデが鏡のように映り込む光景。
無風の静かな時間帯には、現実と虚像の境界が曖昧になるような、幻想的な世界が広がります。

数寄屋造りの書院は、大正時代末期から昭和初期にかけて、京数寄屋造りの名匠と称される中村外二によって手がけられたもの。
細部にまで美意識が行き届いた空間は、建築そのものが一つの芸術作品であることを感じさせます。

書院前に広がる庭園は、庭師・佐野藤右衛門一門の作庭と伝わる「瑠璃の庭」。
一面に敷き詰められた苔が、光の加減によって“瑠璃色に輝く”と表現されるほど美しく、紅葉の季節には、その色彩がさらに深みを増します。

また、庭園の紅葉が書院の机や床、廊下に映り込む様子も見どころのひとつ。
見る角度や時間帯によって表情を変えるため、同じ場所にいても飽きることがありません。

境内には、明治の公卿・三条実美によって命名されたと伝わる茶庵「喜鶴亭（きかくてい）」や、八瀬の名物として知られる「かま風呂」も残されており、瑠璃光院が歩んできた歴史と文化の一端に触れることができます。