大地の芸術祭の代表作。茅葺き民家で味わう、土地の記憶と季節のランチ
新潟県・十日町市に点在する「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の作品のひとつ。
ここは単なる“鑑賞するアート”にとどまらず、地域の暮らし・食・人の温度を丸ごと体験できる場所として、多くの来訪者を惹きつけています。
期間限定で楽しめるのが、地元のお母さんたちが腕を振るうランチ。
主役は、言わずと知れた魚沼産コシヒカリ。そこに、山で採れた山菜、旨みの濃い妻有ポーク、旬の野菜がたっぷりと添えられます。
このランチの特徴は、決まったメニューがないこと。その日に採れたもの、仕入れられたものによって内容が変わるため、訪れる季節ごとにまったく違う表情を見せてくれます。
「次は春の山菜の時期に」「今度は雪解け後に」そんなふうに、何度でも訪れたくなる理由が、ここにはあります。
1924年築・越後中門造りの茅葺き民家を「やきもの」で再生
この建物は、1924年(大正13年)築の越後中門造りの茅葺き民家。
雪国・妻有ならではの建築様式を残した貴重な建物を、「やきもの(陶)」というアートの力で再生した作品です。
1階には、日本を代表する陶芸家たちが手がけた生活空間が点在し、アートが“使われる存在”として息づいていることを実感できます。
また、レストランで提供される料理も、地元食材×陶芸家の器という組み合わせ。
料理を味わいながら、器の手触りや温もりまで楽しめるのは、ここならではの体験です。
2階は、やきものに包まれる静謐な展示空間
2階は、3つの茶室から構成されたやきものの展示空間。
茅葺き民家の静けさと、陶の持つ柔らかな存在感が溶け合い、時間がゆっくりと流れていきます。
華美ではないけれど、心に深く残る空間。
この土地の歴史や暮らしと、現代アートが無理なく共存していることが、肌感覚で伝わってきます。
人の温度が、この場所を特別にしている
もうひとつ、この作品が多くの人に愛されている理由。それは、集落の女衆(おなごしゅう)たちの溌剌とした笑顔とおしゃべりです。
「今日は暑いねえ」「これ、朝採れたばっかりだよ」
そんな何気ない会話が、初めて訪れた人の緊張をほどき、ここを“作品”ではなく、人が集う場所へと変えてくれます。
アート、建築、食、そして人。そのすべてが自然につながり合うからこそ、長く記憶に残る体験になるのだと感じました。
JR飯山線・ほくほく線「十日町駅」から車で約30分
関越自動車道「六日町IC」から車で約50分




